ポメラニアン マリー出産
- ポメラニアンの暮らしと成長の記録 -

2020/03/14

 その日は、3月というのにみぞれ交じりのあいにくの天気で、とても寒い1日でした。

 前日、夕方の散歩から帰るとマリーは、ひとり寝室にこもり食事や水もとらず床を掘って巣作りを頻繁に繰り返すようになりました。予定日は、もう少し先だからと注意しつつ様子を見守りました。

出産の兆候

出産の兆候

 それから日をまたいでお昼過ぎ、異変が…

 ベッドの上が濡れていてもしかして「破水?」

 これは、「羊水では?」緑色の分泌物も混ざっている。すぐさまホームドクターへ連絡。

 色を確認され、どす黒い緑のようであれば、すぐに来院するように促され、明るい緑のようなら様子を見ましょうとのことでした。

 それと、目安として通常の直腸体温より1℃以上(36℃代~37℃代)に下がったら24時間以内に出産と言われているので小まめに体温を測るよう言われました。

 いずれにしても、まもなく出産が始まるとのこと。陣痛が始まらなかったり、どす黒いような分泌物が出るようなら、すぐに来院するように言われました。どす黒い緑の分泌物の場合は、胎盤の成分で、胎盤剥離の可能性があり、帝王切開が必要になるとのことでした。

 マリーのおりものは、明るい緑色だったため、自宅で様子を見ることに。ちなみに、マリーの体温は36.4℃でした。

 ただ、今日は、土曜日で明日は動物病院も休診となるので今夜夕方までに生まれなければ、帝王切開の方が安心でしょうとのタイムリミットも言われました。

 マリーは、部屋の中をソワソワした様子で歩き回ったり、床を掘って巣作りしたり、呼吸もはぁはぁ~。ケージの中に入って臥せの姿勢でじっとしたり…

 この繰り返し。

 部屋のカーテンを閉め薄暗くした中、事前に出産に控えて準備しておいた「エタノールの消毒剤」、「使い捨てゴム手袋」、「タオル複数枚」、「ビニール袋(ゴミ捨て用たくさん)」をケージの横に準備して待機。

 マリーの様子は、新型コロナウィルスで休校自宅待機となった娘2人とともに交代で見守りました。

第一子出産

1匹目出産

 時間は過ぎ、動物病院閉院の時間が気になり始めた16時半を過ぎたころ、出産が始まりました。

 というより、気付いたら産まれていたという感じです。うめき声をあげることもなく、とても静かな出産でした。

 マリーは、赤ちゃんの羊膜を破り、へその緒を噛みちぎって切断…

 後から出てきた胎盤もマリー自身が処理しました。

 胎盤は「どす黒い緑」という表現がぴったりで、動物病院のドクターが話していた「どす黒い緑」は胎盤の色を指していたのだと気づきました。

 誰に教わったわけではないのに、見事な出産と産後の対応でした。野生では、子どもを産む時がいちばん天敵に狙われやすく危険と言われています。きっと野生の名残で、声も上げずに子どもを産み、血液の臭いがするものは、いち早く処分するのでしょう。

 出産が終わると、赤ちゃんをしばらく舐め続けていました。産んだばかりなのに…というこちらの心配をよそにマリーは部屋をウロウロ歩き回りました。

 その隙に赤ちゃんの確認。顔の状態(特に口周り)、脚の状態(指の数や関節の様子など)、お尻周り…そして体重測定と性別確認。その間に赤ちゃんのいるケージの中へ、ペット用の電気湯たんぽをセット。

 産まれた赤ちゃんは、女の子でした。体重は135グラム。身体にも異常はありませんでした。

 ここでホームドクターに再度連絡。様子を報告しました。そして再び破水。

第二子出産

ポメラニアン マリー第二子

 そして最初の出産から40分ほど経過し、第二子を出産。

 1匹目と同じようにマリーは、赤ちゃんの羊膜を破り、へその緒を噛みちぎって切断…

 後から出てきた胎盤もマリー自身が処理しました。と思ったら戻してしまいました。すぐさまゴム手袋で胎盤をつかんでビニール袋に処理しました。その間、マリーはうなり続けて、いつ噛まれるか不安でした。

 するとまたマリーは、部屋の中をウロウロ…

 もしかすると次の出産に備えて歩いているのかも…

 歩くことでお腹の中の赤ちゃんを移動させ産みやすくしているのかもしれません。

 2匹目の確認。身体の確認と体重を測定。

ポメラニアン 赤ちゃん 哺乳日授乳

 男の子でした。体重は120グラム。異常なし。

 1匹目は、すぐにマリーのおっぱいを飲み始めましたが、2匹目の子はなかなかおっぱいにありつけず、動きが悪くなったため、乳児用のミルク(出産直後用)を飲ませることに…手を温めて、アルコール消毒して…

 グピグピ音を立てて飲んでくれました。

 母乳には、栄養と免疫とがたくさん含まれているため、できれば母乳がいいのですが、今回は育児放棄を見込んで準備したミルクを与えました。

 ちなみに与えたミルクはこちら…

ポメラニアン 赤ちゃん 哺乳日授乳

森乳サンワールド(森永乳業グループ)の「プレミアムドッグミルク」。幼犬の発育と免疫に配慮した総合栄養食とのことでした。

150gで2800円程度。

余ってしまったら、母犬マリーに飲ませて良いとのことでした。

第三子からの第四子出産

 また第二子出産から40分後、第三子出産。

 今までの様子を見ていたので、マリーの対処を安心してみていることができました。

 ただ段々とマリーに疲れが見えてきました。

「マリー、お疲れ様ね。」

 第三子は、女の子。133グラム。異常なしでした。

「いやーっ、マリー、お疲れさん。」

 と家族でほっと胸をなでおろしていたら…

 最後の難関が待ち受けていた。

 ケージの中で、3匹の赤ちゃんに母乳をあげながら、マリーは反るような恰好を3回。

 ん?

 急いで近寄ると…

 羊膜に包まれたままの赤ちゃんが…

 うなり声をあげながら、赤ちゃんを守ろうとして触らせてくれないマリーの気をそらしながら、羊膜を引っ張る。

 弾けるようにパチンと音を立てるけれど、頭の部分の羊膜はかぶったまま…

 マリーはうなり声をさらに強くして威嚇してくる。

 意を決して再度、羊膜にチャレンジ。頭の部分を外すことができた。

 するとマリーが慌てた様子で、舐め始めた。

 気付いていなかったのかもしれない。

 赤ちゃんが、動かない。

 赤ちゃんの身体が転がるほどマリーが舐めても動かない…

 娘に缶スプレー式の酸素ボンベを取りに走らせる。

 マリーはずっと舐め続ける…

 マリーがおかしいと感じたのか首をかしげる。

 「百一匹わんちゃん」の出産シーンを思い出す。

 もうダメかもしれない…

 家族誰もが何も言わず、心の中で覚悟していた…

 すると…

 動いた。かすかに足を動かした。

 マリーと赤ちゃんを応援しながら、様子をうかがった。

 足を動かし、口を開けた。

「助かった!生きてる!!」近所に響きわたるような歓声がわいた…

 第四子は、男の子…

 兄弟でいちばん大きな150グラム…

 分娩は大変だったけれど、身体には異状なし…

 この子の名前は、もう決まった。

 「ラッキー」

 マリーお疲れさま。

 マリーの出産は、午後7時半に無事終わった。